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FXは会社の「副業禁止」に引っかかるのか|就業規則と資産運用の線引き|2026年8月版

2026.08.29 / 8MIN / #FX基礎
就業規則の副業禁止規定とFXの位置づけを整理するイメージ

どうも、ノンストップ浩二です。就業規則には副業禁止と書いてある、ではFXはどうなんだ——。走り続ける30代の兼業から、これは本当によく届く質問です。先に結論を置きます。国が「FXは副業に当たらない」と定めた明文は、厚生労働省の資料を全文で当たった範囲では見つかりませんでした。公的な線引きが無い以上、答えのある場所は一つしかありません。自社の就業規則です。この記事では原文をたどりながら、どこまでが公的に確認できて、どこから先が各社の判断なのかを整理します。

就業規則の「副業禁止」は何を禁止しているのか

就業規則の副業禁止規定とは、勤務時間外の過ごし方のうち、会社が業務への支障などを理由に制限できる範囲を、各社がみずから定めた社内ルールです。国の法律が一律に禁じているわけではありません。

出発点は、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が裁判例を整理した部分にあります。平成30年1月に策定され、令和2年9月と令和4年7月に改定された、20ページの文書です。

原文|副業・兼業の促進に関するガイドライン「1 副業・兼業の現状(2)」
(2) 副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、例えば、 ① 労務提供上の支障がある場合 ② 業務上の秘密が漏洩する場合 ③ 競業により自社の利益が害される場合 ④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合 に該当する場合と解されている。

ここで落としてはいけない語が2つあります。1つは冒頭の「基本的には労働者の自由であり」。制限のほうが例外だという順番で書かれています。もう1つは「例えば」。この4つは例示であって、これ以外は制限できないという限定列挙ではありません。「禁止できるのは4類型だけ」という説明を見かけたら、原文の3文字が抜け落ちています。

厚生労働省のモデル就業規則は、いま何と書いてあるか

モデル就業規則の最新版は令和7年12月版で、副業・兼業は第14章の第70条に置かれています。第1項が勤務時間外の他社業務への従事を認め、第2項で会社が禁止または制限できる場合を4つ挙げる。この二段構えになっています。

原文|モデル就業規則(令和7年12月版)第70条
第14章 副業・兼業 (副業・兼業) 第70条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。 2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。 ① 労務提供上の支障がある場合 ② 企業秘密が漏洩する場合 ③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 ④ 競業により、企業の利益を害する場合

第2項の文末に目を留めてください。禁止又は制限することが「できる」。しなければならない、ではありません。判断の余地は会社の側に残されています。

そしてこれはモデル、つまり規定の例示です。厚生労働省が示した書きぶりの見本であって、あなたの会社の就業規則を自動的に書き換えるものではない。「モデル就業規則で副業が解禁された」という理解は、この一点でずれます。

もっとも、拡大解釈への釘は同じ文書の解説にきちんと刺さっています。

原文|同 解説【第70条 副業・兼業】4
4 裁判例では、労働者の副業・兼業について各企業の制限が許される場合は、第2項各号で規定したような場合であることが示されていると考えられます。 各号に該当するかどうかは各企業で判断いただくものですが、就業規則の規定を拡大解釈して、必要以上に労働者の副業・兼業を制限することのないよう、適切な運用を心

引用が途中で切れているのは、この一文が全94ページの92ページ目の末尾にあり、続きが次ページに回っているためです。原文に無い語を補うわけにいかないので、切れたまま載せます。

では、FXは「副業」なのか。公的な線引きは存在するのか

先に答えを書きます。FXが副業に当たるかどうかを国が定めた明文は、確認できませんでした。厚生労働省の主要な3文書と労働基準法を当たって、資産運用への言及そのものが見つからない、というのが2026年8月29日時点の結果です。

当たった一次情報「資産運用」「株式」「投資」「不動産」への言及
モデル就業規則
(令和7年12月版・94ページ全文)
第70条とその解説に該当語なし。副業・兼業の射程として挙がるのは「他の会社等に雇用される形」「事業主となって行うもの」「請負・委託・準委任契約により行うもの」の3つ
副業・兼業の促進に関するガイドライン
(令和4年7月改定・20ページ全文)
形態の例示は「正社員、パート・アルバイト、会社役員、起業による自営業主等」。「資産運用」の語なし
同ガイドライン Q&A
(令和4年7月13日改定版・60ページ全文)
4語とも本文に1件もヒットせず
労働基準法 第38条第1項「労働時間」の通算規定のみ。資産運用への言及なし

Q&Aは全60ページ。機械検索では「資産運用」0回・「株式」0回・「投資」0回・「不動産」0回で、4語とも1件もヒットしません。厚生労働省が副業・兼業を語るときのことばに、そもそも資産運用が入っていない。

この表から読み取れるのは、「資産運用は副業ではない」という国の宣言があるということではありません。言えるのは、厚生労働省が副業・兼業として想定し例示しているのは雇用・自営・請負であって、資産運用はそこに挙がっていない、という事実だけです。無いものを根拠に断定はできない。ここが一番踏み外しやすいところだと思います。

よく引き合いに出される労働基準法も同じです。条文はこうなっています。

原文|労働基準法 第38条第1項
(時間計算) 第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

主語は労働時間です。資産運用について、この条文は何も述べていません。述べていない条文を持ってきて「だからFXはセーフ」と反転させるのは、条文に言っていないことを言わせる行為になります。書けるのは、これが労働時間についての規定だ、というところまで。

補足を2つ。「事業場を異にする場合」については、昭和23年5月14日付け基発第769号が「事業主を異にする場合をも含む」としています。通算の考え方は令和2年9月1日付け基発0901第3号が示していて、どちらもモデル就業規則の参考欄に引かれています。ただし、そのどちらにも資産運用は出てきません。

ガイドラインの位置づけも押さえておきます。原文は「原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である」、そして「原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められる」。適当である、検討することが求められる——義務規定ではありません。前段には「そのような事情がなければ」「労働時間以外の時間については」という限定も付いています。

細かいところをもう1つ。ガイドライン本体の最新改定は令和4年7月です。厚生労働省の副業・兼業のページには令和7年3月31日改定のものも並んでいますが、そちらはパンフレットであって、ガイドライン本体ではありません。「令和7年に改定された」と紹介している記事を見たら、どちらを指しているか確かめたほうがいい。

読むべきは自社の就業規則のどこか

公的な線引きが無いということは、線は各社の就業規則のなかにしかないということです。だから読む先は国の資料ではなく、手元の規則になります。見出しだけでなく、書きぶりまで見てください。

就業規則で確認する5点
  1. 副業・兼業の条があるか。独立した章になくても、服務規律のなかに紛れていることがある。
  2. 禁止なのか、許可制なのか、届出制なのか。この3つは意味がまったく違う。モデル就業規則の第70条は届出をきっかけに会社が判断する組み立てになっている。
  3. 禁止・制限の理由がどう書かれているか。モデル就業規則の4つに沿っているのか、それよりも広い言いまわしなのか。
  4. 対象が何と書いてあるか。「他の会社等の業務」なのか、もっと広い書き方なのか。対象の広さは語尾ひとつで変わる。
  5. 読んでも判断がつかないとき。あてずっぽうで決めず、人事や総務にたずねるのがいちばん早い。

なお、住民税の徴収方法を気にする人は多いのですが、総務省の説明では会社員は「原則として」特別徴収です。徴収方法を主題にした記事ではないので、ここでは深入りしません。会社に知られない方法を探すより、規則を読んで堂々と判断できる状態にするほうが、後々ラクだと思います。

順番としては、規則を読む、分からなければ聞く、そのうえで相場の話。逆にすると後で面倒になります。いつ相場を見るかの設計は兼業トレーダーの時間帯戦略に、荒れる時間の避け方はFX経済指標カレンダーの使い方にまとめました。保有を続ける前提で考えるならスワップポイントの仕組みも先に読んでおくといい。

公務員は前提が違う

民間の会社員と公務員では、根拠になる文書からして違います。国家公務員には、就業規則より上の法律そのものに規定があります。

原文|国家公務員法 第103条・第104条
(私企業からの隔離) 第百三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。 前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。 営利企業について、株式所有の関係その他の関係により、当該企業の経営に参加し得る地位にある職員に対し、人事院は、人事院規則の定めるところにより、株式所有の関係その他の関係について報告を徴することができる。 (他の事業又は事務の関与制限) 第百四条 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

第103条の第1項が禁じているのは、役員・顧問・評議員の職を兼ねることと、自ら営利企業を営むことです。株式を保有すること自体を禁じる文言は、ここにありません。なお引用したのは第1項から第3項までで、第103条は第7項まであります。第4項以降は、第3項の報告を受けたあとの人事院の通知、それに対する不服申立て、準用の範囲、そして期間内にその企業との関係を絶つか官職を退くかという措置の手続を定めた部分です。第3項は保有関係について人事院が報告を求められるという規定で、禁止規定ではない。第104条のほうは「報酬を得て」事業に従事する場合の許可制です。

地方公務員には別の条文があります。今回はその原文に当たっていないので、この記事では扱いません。所属先の規程と、根拠になる条文の現物をご自身で確かめてください。

よくある質問(FAQ)

Q. FXは副業にあたりますか?
A. 国がそれを定めた明文は確認できませんでした。厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)、副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和4年7月改定)、そのQ&A(令和4年7月13日改定版)を全文で当たっても、資産運用や株式への言及そのものがありません。副業・兼業として例示されているのは雇用、事業主となって行うもの、請負・委託・準委任契約です。当たるかどうかは、最終的に自社の就業規則の書きぶりで決まります。
Q. 就業規則に副業禁止と書いてあったら、FXもできませんか?
A. その規定が何を対象にしているかを読むところから始まります。厚生労働省のモデル就業規則が想定しているのは「他の会社等の業務」への従事ですが、各社の規則がそれと同じ書き方とは限りません。対象の範囲、届出制か許可制か禁止か、禁止できる理由の書きぶりを確認し、判断がつかなければ人事や総務に確認するのが確実です。
Q. 厚生労働省のモデル就業規則で副業は解禁されたのですか?
A. モデル就業規則は厚生労働省が示した規定例であって、各社の就業規則をそのまま書き換えるものではありません。ガイドラインも「原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である」「認める方向で検討することが求められる」という書き方で、企業に義務を課す規定ではありません。
Q. 労働基準法の労働時間の通算は、FXにも関係しますか?
A. 労働基準法第38条第1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。主語は労働時間で、資産運用について条文は何も述べていません。何も述べていない条文を根拠に、FXが副業に当たらないと結論づけることはできません。

参考にした一次情報

Primary Sources
  • 厚生労働省 労働基準局 監督課「モデル就業規則」令和7年12月版(全94ページ)/PDF。
  • 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」令和4年7月改定(全20ページ)/PDF。
  • 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン Q&A」令和4年7月13日改定版(全60ページ)/PDF。
  • 厚生労働省「副業・兼業」のページ/mhlw.go.jp。
  • 労働基準法・国家公務員法(e-Gov 法令検索)/労基法・国公法。
  • 総務省「地方税制度|個人住民税」/soumu.go.jp。

上記はいずれも2026年8月29日に各公式ページで内容を確認しました。法令・行政文書は改定されるため、判断の前に公式の最新版をご確認ください。

調べていていちばん意外だったのは、国の資料に「資産運用」という語がここまで出てこないことでした。線を引いてくれる文書が無いなら、線は自社の就業規則のなかにあります。相場を見に行く前に、まず自分の会社のルールを読む。順番はそれだけです。

浩二
本記事は一般的な情報提供を目的とし、特定商品の購入・取引を勧誘するものではありません。また、個別の労務・法律相談に対する回答ではありません。本文中の法令・行政文書は2026年8月29日に各公式ページで確認したものであり、改正・改定される場合があります。副業・兼業の可否は各社の就業規則および個別の事情によって異なるため、判断に迷う場合は勤務先の人事担当部署や専門家へご確認ください。FX(外国為替証拠金取引)はレバレッジにより損失が預けた証拠金を上回る可能性があり、元本は保証されません。取引条件は各社で異なるため、申込前に必ず公式の最新情報をご確認ください。取引の判断はご自身の責任で、余裕資金の範囲で行ってください。

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