FXの決済を中継する銀行は7社に減った
浩二です。口座を比べるとき、僕らはスプレッドとスワップポイントを見ます。では、その裏側で注文を最終的に受けているのは誰なのか——。金融先物取引業協会が2025年10月31日に公表した「店頭外国為替証拠金取引の実態調査結果について」に、その数が載っていました。調査対象は2025年4月30日時点で店頭FXを扱う会員46社。事実ベースで整理します。
プライムブローカーは、何をしている業者か
ひとことで言えば、FX会社とカバー先銀行のあいだに入って決済を中継する業者です。同調査の脚注では、Prime Broker(PB)を「会員とカバー先銀行との取引を中継し、会員とカバー先金融機関との取引(決済)について、Give UpまたはTri-party Agreementに基づき、会員のポジションをTake Upする業者」と定義しています。
FX会社が自分でカバー先の銀行1行ずつと契約して決済まで回すのは重い。そこを1社にまとめて引き受けるのがPBの役回りです。利用者から見えるところには一切出てきませんが、注文の流れの末端には必ず誰かがいます。
純計すると、PB業者は7社しかない
同調査の図表5によれば、2025年4月度でPB制度を利用する会員は15社、利用契約数は35件。しかし契約先の重複を除いたPB業者数(純計)は7社でした。15社が35本の契約を結んでいても、相手はのべ7社に収まっているという意味です。
さらに図表7では、この7社すべての属性が「東京外為市場委員会報告対象金融機関」に分類されています。ⅱの日銀報告対象金融機関、ⅲの中銀報告対象金融機関等(海外)、それ以外の国内業者・海外業者は、いずれも2025年は0社。2016年には海外業者が2社いましたが、いまは残っていません。
10年で、PB業者の数はこう動いた
同じ図表5から、調査年月ごとの推移を抜き出すと次のようになります。金額はPB制度による店頭FX取引の顧客取引額(1か月分)です。
| 調査年月 | 利用会員数 | 契約数 | PB業者数(純計) | PB利用額(百万円) |
|---|---|---|---|---|
| 2016年4月 | 15 | 31 | 10 | 70,312,312 |
| 2019年4月 | 16 | 31 | 6 | 50,243,748 |
| 2021年4月 | 18 | 42 | 10 | 75,102,439 |
| 2022年4月 | 16 | 38 | 9 | 108,821,216 |
| 2024年4月 | 16 | 36 | 7 | 75,522,806 |
| 2025年4月 | 15 | 35 | 7 | 97,599,082 |
業者数は2016年の10社から、2019年に6社まで落ち、2021年に10社へ戻り、2023年以降は7社で横ばい。一方で扱う金額は増えています。2025年4月の97,599,082百万円は、2016年4月の70,312,312百万円のおよそ1.39倍です。担い手は増えないまま、通す量だけが増えた形になります。
取引額の全体で見ると、PB経由はどのくらいか
同じ調査の表2に、店頭FX取引の顧客取引額が載っています。2025年4月度は14,725,065億円。ここからカバー取引として外へ出た金額(外部流通量)は4,484,371億円で、比率は30.5%。残りの10,240,693億円は業者の内側で相殺された内部流通量です。
PB利用額の97,599,082百万円は、円単位に揃えると975,990億円。顧客取引額14,725,065億円に対して、僕が割ると約6.6%になります。外へ出ていく3割のうちの一部が、この7社を通っている計算です。
ちなみに同調査の表3では、FX取引の外部流通量総計が東京外国為替市場のスポット取引額に対して約112.2%と記されています。個人向けFXの外への流れは、東京市場の現物取引をすでに上回る規模です。参考までに、くりっく365の取引額は同月で25,649億円でした。
会社が減っているのは、PB業者だけではない
調査対象会員数そのものも減っています。図表1によれば2016年4月の51社から、2017年に53社まで増えたあとは減少が続き、2025年4月は46社。2025年度は1社が他の会員へ店頭FX事業を譲渡して退会しました。PB制度の利用についても、2025年4月度は「PBの利用を止めた会員」が1社、新たに利用した会員は0社です。
集約は上流でも下流でも進んでいる、というのが数字から読めることです。
この構図は、僕らの口座にどう効くか
直接の影響を断定できる材料は、この調査にはありません。統計から言えるのは、次の3点までです。
- 会社の看板が違っても、決済の出口は重なりうる:15社の35契約が7社に収れんしているという事実がそれを示します。
- 分散のつもりで口座を増やしても、上流までは分散しない:2社に口座を持っても、その先が同じ相手ということは起こりえます。
- 注文の流れは会社ごとに違う:そもそもPB制度を使っているのは46社中15社で、使っていない会社のほうが多い。自分が使う会社がどちらかは、この調査からは分かりません。
口座を選ぶ基準を変えろ、という話ではありません。僕がこの調査を読んで思ったのは、「見えているのは表面の条件だけだ」と知ったうえで選ぶほうが落ち着くということです。スプレッドの0.1銭を比べる時間は、それはそれで意味があります。
まとめ
2025年4月度の店頭FX調査で確認できたのは、PB制度の利用会員15社・契約35件に対して、相手方のPB業者は純計7社であり、その7社すべてが東京外為市場委員会報告対象金融機関だということ。10年前の10社から減り、通る金額は増えています。一次情報をたどりながら整理しました。数字は調査時点のもので、今後の調査で動きます。
最終更新:2026年9月17日
よくある質問(FAQ)
プライムブローカーとは何ですか?
FX会社とカバー先銀行の取引を中継する業者です。金融先物取引業協会の実態調査では、Give UpまたはTri-party Agreementに基づいて会員のポジションをTake Upする業者と定義されています。
PB業者は何社ありますか?
2025年4月度の調査では、重複を除いた純計で7社です。PB制度を利用する会員は15社、利用契約数は35件でした。7社すべてが東京外為市場委員会報告対象金融機関に分類されています。
すべてのFX会社がPB制度を使っているのですか?
使っていません。2025年4月度の調査対象46社のうち、PB制度を利用しているのは15社です。カバー取引の形は会社ごとに異なります。
PB経由の取引額はどのくらいですか?
2025年4月度で97,599,082百万円(約97.6兆円・1か月分)です。同月の店頭FX顧客取引額14,725,065億円と比べると、およそ6.6%にあたります。
自分が使っている会社のPB業者は分かりますか?
この調査では業者名も、会社ごとの内訳も公表されていません。カバー取引の方針は各社の契約締結前交付書面や取引説明書に記載があるので、そちらを確認してください。
一次情報:金融先物取引業協会「店頭外国為替証拠金取引の実態調査結果について」(2025年10月31日公表・2025年4月度基準)(調査対象会員数、図表5のPB制度利用状況、図表7のPB業者の属性、表2のFX取引の外部流通量、表3の東京外国為替市場との比較/2026年9月17日確認)